刑事とヤクザの境界線!警察「マル暴」の知られざる捜査実態とは
街頭に立つ地域課の警察官や、殺人・強盗を追う捜査第一課の刑事と、マル暴の捜査員を分かつ最大の要素は「対峙する対象の特殊性」にある。凶悪事件が起きてから動く一課に対し、マル暴は犯罪が起きる前の組織構造そのものにメスを入れ、解体に追い込むことを至上命題とする。そのため、捜査員には相手の組織体系、盃ごとの人間関係、代紋の歴史に至るまでの膨大な知識が叩き込まれる。
武器となるのは、暴力団対策法(暴対法)と各自治体が施行する暴力団排除条例だ。これらは一般的な刑事訴訟法に基づく捜査権限に加え、みかじめ料の要求や事務所の使用差し止めといった行政命令を迅速に発動させる強力なバックボーンとなる。一般の警察官であれば民事不介入として処理されかねない金銭トラブルであっても、背後に組織の影がちらつけば即座にマル暴が介入する。この機動性と介入の深さこそが、一般警察官との決定的な違いに他ならない。
だが、その権限には過酷な制約が伴う。暴力団関係者との接触が多い職務上、癒着や情報漏洩のリスクと隣り合わせだ。かつてのように「ヤクザと酒を飲んで情報を取る」時代は完全に終わりを告げた。現在では、関係者とのあらゆる接触について事前の申請と綿密な報告が義務付けられており、規律違反は即座に懲戒対象となる。法執行機関・警察行政のなかでも、最も厳格な倫理規定に縛られながら綱渡りの情報戦を繰り広げているのが実情だ。