益子直美が語るスポーツ界の脱・スパルタ改革と知られざる現在地
試合中、ベンチからの怒号に選手たちがビクビクと身体をすくませる――そんな光景は、長年にわたり日本の部活動やジュニアスポーツの現場で日常茶飯事だった。現役時代の益子自身、怒られる恐怖から失敗を恐れ、プレーの歓びを見失っていた時期があるという。その苦い記憶が、彼女をひとつの行動へと突き動かした。
彼女が設立した「一般社団法人監督が怒ってはいけない大会」は、文字通り「監督が子供たちを怒ってはいけない」という極めてシンプルかつ革新的なルールを掲げている。もし監督が怒鳴ったり過剰な叱責を行ったりした場合は、グリーンカードならぬ「黄色い旗」が提示され、大会本部から即座に注意が入る仕組みだ。最初は半信半疑だった指導者たちも、子どもたちが自ら考え、生き生きと笑顔でプレーする姿を目の当たりにして意識をガラリと変えていった。
怒りを封印されたことで、大人が教え込むのではなく、子ども同士がコート上で「次どうする?」と話し合い始める。この主体的変化こそが、女子バレーボールをはじめとするジュニアスポーツの現場に足りなかったピースなのだと益子は力説する。