映画『ある男』愛した夫は誰?衝撃の正体と結末、戸籍交換の真相を解剖
映画『ある男』は、芥川賞作家・平野啓一郎氏が2018年に発表し読売文学賞を受賞した同名小説を原作としています。小説と映画では、物語の骨格こそ共通しているものの、「弁護士・城戸の描き方」と「衝撃のラストシーン」において重要な改変が施されています。
原作小説における城戸は、依頼人である里枝を支えながら知的に調査を進める「客観的な観察者・狂言回し」としての側面が色濃く描かれています。平野氏が提唱する「分人主義」(人は対人関係や環境ごとに異なる顔=分人を持って生きており、その総体が自分であるという考え方)を軸に、誠の人生を多角的に分析していく構造が特徴です。
一方、映画版では城戸自身の内面的な揺らぎと苦悩が前面に押し出されています。義理の実家からの無意識な民族的偏見、妻との冷え切った関係に苛まれる城戸が、調査の過程で原誠の人生に過剰なまでに感情移入し、次第に「自分自身も他者になり代わりたい」という誘惑に囚われていく心理サスペンスとして再構築されました。
特に映画オリジナルのラストシーンは鳥肌ものです。調査を終えた城戸が一人で立ち寄ったホテルのバーで、隣り合わせた見知らぬ女性客に声をかけられた際、自分とはまったく異なる偽の経歴・名前をスラスラと名乗るという演出が追加されました。この瞬間、追う側だった城戸自身がもう一人の「ある男」へと変貌を遂げる戦慄の幕切れとなっています。