「キチガイ」はなぜ放送禁止なのか?メディア自主規制の歴史と言い換え表現
世間ではしばしば「法律で定められた放送禁止用語」と誤解されがちですが、日本の電波法や放送法の中に「この言葉を使ってはならない」と直接規定した条文は存在しません。メディアから特定の語句が消えた理由は、放送局や出版各社が自ら設けた「自主規制」によるものです。
メディア自主規制の歴史が大きく動いたのは1970年代から1980年代にかけてでした。当時、精神障害者の当事者団体や人権保護団体から、テレビや新聞における無自覚な表現が精神疾患への偏見や社会的差別を助長しているという厳しい指摘と改善要求が相次ぎました。「キチガイ」という言葉が、精神障害を持つ当事者を傷つけ、人間としての尊厳を損なう差別表現であるという認識が社会的に共有されていったのです。
これを受けて、NHKや日本民間放送連盟(民放連)は「放送基準」および「差別用語・不快用語に関するガイドライン」を整備しました。放送コードの基準に基づき、精神障害者への差別表現や身体的特徴を揶揄する語句は、放送現場において「原則として使用しない用語」として徹底的に排除されることになりました。