数億円を動かす名将の孤独と野望――競馬調教師という過酷な生き様
日本の調教技術が世界水準へと跳ね上がった背景には、東西の拠点で繰り広げられてきた切磋琢磨がある。とりわけ滋賀県に位置する栗東トレーニングセンターは、高低差のある坂路コースを武器に数多くの名馬を世に送り出し、日本競馬の勢力図を牽引してきた。
この地から世界へと果敢に打って出た代表格が矢作芳人だ。「よく稼ぎ、よく走る」を信条とする矢作厩舎は、中東やアメリカの最高峰レースで歴史的勝利を積み重ねてきた。独自のローテーションと徹底した現場主義でサラブレッドの限界を押し広げる手腕は、海外メディアからも熱い視線を集めている。
一方、関東の雄として牝馬三冠馬をはじめ数多の名馬を手がけた国枝栄は、馬の個性に寄り添う柔軟な調整力で競馬史にその名を刻んできた。百戦錬磨の知将たちが築き上げた緻密なコンディショニング理論は、いまや海を越えて世界の競馬界に多大な影響を与えている。