怪演と包容力を操る名優・大森南朋、スクリーンに刻む唯一無二の凄み
北野武監督のバイオレンス大作『アウトレイジ 最終章』において、大森が見せた市川役の狂気と忠誠心は記憶に新しい。張グループの若頭として、北野演じる大友の背中を静かに見つめ、引き金を引く瞬間の乾いた静寂。言葉少なに漂わせる死生観とアウトローの矜持は、群像劇のなかで際立った異彩を放っていた。
その一方で、NHK大河ドラマ『どうする家康』では徳川四天王の筆頭・酒井忠次役を熱演し、幅広い層の視聴者を魅了した。家臣団のまとめ役として主君を支え続け、宴席で見せる「海老すくい」の舞で見せる滑稽さと、戦場で見せる老練な武将の鋭さ。時代劇という厳格なフォーマットのなかに、血の通った人間味と哀歓を吹き込んでみせた。
血生臭い現代劇のバイオレンスから格式ある時代劇まで、大森はどの世界観にも違和感なく溶け込む。その自在な適応力は、形骸化したジャンルの壁を軽々と打ち破る力を持っている。