酒鬼薔薇事件の未公開記録に迫る:元少年Aの現在地と手記の深層
2015年6月、太田出版から刊行された手記『絶歌』は、出版界のみならず日本社会全体に巨大な激震を走らせた。かつて日本中を震撼させた加害者本人が、自らの生い立ちから犯行の手順、そして出所後の生活を赤裸々に綴ったその書籍は、遺族への事前連絡や了解が一切ないまま突如として書店に並んだのである。
被害者遺族は激しい怒りと耐え難い苦痛を表明し、書店チェーンの中には配本を拒否したり棚から撤去したりする動きが相次いだ。手記の出版によって得られる印税の使途や、加害者が商業出版を通じて自己表現を行うことの是非をめぐり、法学者や文芸評論家の間でも賛否が真っ向から対立した。印税の一部が遺族への賠償に充てられたとされる一方で、本人のWebサイト開設など自己顕示欲とも取れる一連の行動は、遺族の尊厳を二度踏みにじるものとして厳しい指弾を浴び続けた。