泥の河から流転の海へ!宮本輝が描く魂の人間ドラマと名作の深層
文学界への登場は鮮烈というほかなかった。1977年に発表された『泥の河』が太宰治賞を受賞し、翌年には雪深き富山を舞台にした『螢川』で第78回芥川賞を受賞。いわゆる「川三部作」の完成によって、若き語り部は瞬く間に純文学の旗手として位置づけられた。
宮本が描く初期作品の魅力は、残酷な現実と少年期の瑞々しい感性が織りなす危うい均衡にある。大阪の安治川河口、舟上生活者の少年との出会いと別れを描いた風景には、貧困の生々しさとともに、どこか神聖な透明感が漂う。ただの悲劇に終わらせず、生きることそのものの根源的な輝きを浮き彫りにする筆致は、当時から突出していた。