滋賀・草津の行列店「パン ドゥ マルシェ」へ。なぜこのパン屋は時代を超えて人を惹きつけ続けるのか【2026現地取材】
午前7時前。まだ薄暗い空の下、駐車場にはすでに数十台の車がエンジンを休めていた。目的はただ一つ。開店と同時に店内に並ぶ、できたてのパンを手に入れるためだ。寒風が吹き抜ける日であっても、待つ人々の顔に悲壮感はない。むしろ、これから出会う小麦の芸術への期待で瞳を輝かせている。
「ここのクロワッサンとデニッシュを食べたら、他には戻れないのよ」と笑うのは、大津市から毎週通っているという50代の女性客だ。店内へ入る人数が制限されるなか、焼き上がりのベルが鳴るたび、棚のパンはみるみるうちに姿を消していく。まさに戦場のような熱気だ。しかし、そこにはギスギスした空気ではなく、美味しいものを共有する独特の連帯感が漂っている。